心理学における心の病

心理学ブームなどと言われてからずいぶん経ちますが、相変わらず「心」の問題に対する関心は高いようで、性格をテーマにした本や、人間関係のハウツー本の類がベストセラーに名を連ねています。
情報過多の現代、良書を見分ける目が必要になってきている昨今です。

「人格障害」「異常性格」「精神病質」etc・・・
正確に定義すればそれぞれ違いがありますが、どれも「心」に病を抱えた人たちを示す言葉と言えます。
現代人は多少の差はあっても、誰もが心の病を抱えていて、むしろまったく問題のない人の方が少ないかもしれません。

何が原因かは、誰にも分からないでしょうが、文明や技術の進歩が人の心に悪影響を与えている側面もあるようです。まわりの状況は急激な変化を遂げているのに、人間そのものは大昔とさほど変わっていないのですから、うまく適用しようとするほうが無理なのかもしれません。

心の病にどのようなものがあるのかを、ドイツの精神医学者シュナイダーが行った類型化を例に見てみると、
「社会を悩ます類型」(犯罪者に多いとされる)
「自分が悩む類型」(精神病患者などに多いとされる)
があると考え、さらに10類型に分けたうえで、さらにそれぞれを細分化しました。もちろん、ここに挙げられているのは典型例であって、いくつかの精神病質に当てはまる人もいます。

①発揚性(はつようせい)精神病質
軽い躁状態(そうじょうたいー気分が著しく高揚した状態の事。)を持続している。好戦的で興奮しやすく、トラブルを起こしやすい。

②意志欠如性(いしけつじょせい)精神病質
何事にも飽きやすく、持続力がない。転職を繰り返したりする。

③情性欠如性(じょうせいけつじょせい)精神病質
同情、羞恥(しゅうちー恥ずかしいと思うこと。恥じらい。)、後悔、良心といった人間的感情に欠けている。

④爆発性(ばくはつせい)精神病質
カッとして暴力をふるったりする。すぐ行動に出るタイプと、蓄積して大爆発するタイプがある。

⑤狂信性(きょうしんせい)精神病質
特定の観念に固執している。闘争的なタイプとそうでないタイプがある。

⑥抑鬱性(よくうつせい)精神病質質
常に悲観的で憂鬱な気分でいる。「気重タイプ」「不機嫌タイプ」「偏執的タイプ」に分かれる。

⑦気分易変性(きぶんえきへんせい)精神病質
周期的に不機嫌になる。ウサを晴らす為に暴力や暴飲などの行為に走る。

⑧自信欠乏性(じしんけつぼうせい)精神病質
被害妄想などを起こす敏感タイプと自意識が強い強迫タイプがある。

⑨無力性(むりょくせい)精神病質
自身の心身に不安を持ち、原因不明の体調不良を訴えたりする。

⑩顕示性(けんじせい)精神病質
かつてはヒステリー性格などと言われた。「奇抜タイプ」「自慢タイプ」「虚言タイプ」がある。

①~⑤は「社会を悩ます類型」で、⑥~⑨は「自分が悩む類型」。⑩は両方の性質を持つとされる。

この一覧を見てみると、たいていの人は1つや2つは当てはまるような気がするのではないでしょうか?
これは人間の基本的感情、喜怒哀楽をもとにしていて、誰もが「コントロールの効かない状態になる可能性を持っている」ことを示します。

心の病を研究し、「心理療法」(もしくは「心理学的処置」)を施すのも心理学の領域の1つです。しかし、研究の成果は徐々にあがっているとはいえ、心の問題は複雑で未解明の部分も多く残っています。

その一方で、現代社会のさまざまな事件や現象を見ていると、まったく新しいケースが出てきたり、今までには滅多になかったことが当たり前になったりしています。文明や技術の進歩は、これからも速くなる一方でしょう。心が抱えている問題と一言で言っても、実は奥深く、幅広い領域なのです。

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