不安を克服するためには

不安を感じる事は誰にでもあります。この新年度の時期にはその「不安感」を一層強く感じる人も多いのではないでしょうか。 特に理由もない漠然とした不安感にも、対処する方法はあるということを今回はご紹介します。

芥川龍之介は遺書の中で、自殺の動機について分析しています。 一般的に挙げられる生活難、病苦、精神的苦痛などの動機は決定的なものではなく、動機にいたる過程なのではないか、と考えていたことが伺えます。 彼自身は死を選ぶ理由として「将来に対するただぼんやりとした不安」と記しました。

 

あまりにも抽象的な理由のように思えますが、将来について漠然とした不安を感じている人は多いのではないでしょうか。 社会全体が豊かになり、自由を謳歌しているように見える現代の日本で「心」の問題で苦しんでいる人が非常に多く、毎年多数の自殺者が出ているのですから。 不安には、理由がハッキリしているものと、そうでないものがあります。

 

理由がハッキリしている場合、たとえ深刻な理由であってもまだマシと言えるかもしれません。簡単に解消するのは難しいとしても、理由がハッキリしていない場合よりも対策が立てやすいからです。 不安というのは、不幸で不安定な状態であっても、幸福で安定した状態であっても生まれます。解消するのが難しいという意味では幸福な状態で感じる不安の方がやっかいな問題かもしれません。

 

アメリカの心理学者が「監獄実験」と呼ばれる実験を行って物議をかもしたことがあります。 実験内容 心身共に健康な社会人(男性)21人に、囚人役(10人)と看守役(11人)に分かれてもらい、与えられた役割によって言動にどんな変化が現れるかを調べました。

 

囚人役は、本物の警察に逮捕されて、本物の監獄に入れられます。 看守役の方にも、本物の制服を着せて警棒などの装備も身に着けて職務に当たります。 言動の変化はすぐにみられました。 看守役は高圧的な態度をとるようになり、囚人役に侮蔑的な言葉を浴びせるようになります。

 

一方囚人役は無気力で情緒不安定になっていきました。 予想を上回る急激な変化は、精神への悪影響への配慮から2週間の予定だった実験を6日間で打ち切られてしまったほどです。 この実験はいくつかの興味深い結果を残しました。その一つは、なんらかの役割を与えられ、その役になりきろうとすると、精神的に大きな変化が現れるということ。

 

この効果は実生活にも応用できるものです。自分の性格を変えるためには、自分が望ましい特性を持った人間であると思い込めばいいのです。 有名な心理学の実験では、スーツや白衣を着ると人は内面までもがその「服装にふさわしい」人格になる場合が多いというものがあります。 詐欺師ほどちゃんとした服装をしている(いかにも立派そうなスーツ姿をしている)というのは心理学的には有名な話です。

 

ちゃんとした服装をしていると、「この人はちゃんとした人なんだ」と思ってもらえる為、詐欺師とバレない事が多いからです。 全く別の性格になるのは難しくても、多少の欠点を克服する効果は期待できます。不安を感じやすいと自覚している人には、できるだけそういう事を考えず、不安を感じない前向きな考え方の持ち主という「役割」を演じることをお勧めします。

 

昨今は、漠然とした不安を感じている人が少なくありません。「マリッジブルー」などはその典型でしょう。 不安は「仮定された不幸」である場合が多いかもしれません。 災害が起こった時に、本当に怖いのは二次災害だとも言われます。不安がパニックを引き起こし、被害を大きくするからです。 はじめはフリをしているだけでも、次第に思い描いた像に近づいていくはずです。

Follow me!

コメントを残す